小部屋の住人 =宮村 誠=
『新世界より』

屈託のない世界はこんなにも端のほうから端のほうから
つづら折りになって私のほうへと閉じていく
次第にやり場のない私のボックスステップは
踏み出しては落ちるはみ出しては降りる
陰謀だ。これは陰謀に違いないのだ

例えばの話をしよう
もし、芸術家を志す青年カートが
そのキャンバスいっぱいに黒くなったバナナを描いてみたら
瞬く間に世界から賞賛されて500億で売れて
世界中がもっと絵をもっと素晴らしい絵をと
声をそろえていったのならば
『そーれは陰謀だ!!』
気の弱いカートは猟銃を咥えて自殺するしかない
そういうことだよ
そういうことで世界は成り立っている

ジンクスはいつだって視野を狭めていく
自分の作ったルールに取り憑かれ殺される
後悔は音速ソニックで脳裏を苛む
終わってしまったことには何の解決の手立ても与えられない
じゃあ面の皮の厚い人種だけが生き残るのか
事実、これから永きにわたって降り注ぎ続ける
邪悪紫外線はきゃつらの面の皮を通り抜けることはできない
しかしながら僕らは潔白徒なのだから
その紫外線を白い布で跳ね返したらいいじゃあないか
だけどとっさにできないよねぇそんなこと

夕焼けがカートを連れ立って地平線の国境に消えていくのを
僕らは途中までバスに乗って見送った
あいつはそこまでされたことにバツの悪そうな顔をしてたけど
本当はみんな自身の慰めのためだって知ってる
カートは最後に一言だけボソリと言ったのさ
「なにも僕じゃなくたっていいじゃあないか」
落ちる夕日と重なるカートの影は小さく
次第に小さくそれは黒点みたいに
揺らめいて消えていった
彼のことなんてみんなそのうち忘れてしまうけど
今くらいはって思いながら泣いた
誰かがそれを見て
「葬式みたいだね」と言った

不遜にもカート・コバーンと自分を詩の中で同化させてしまいました。
「しかしながら僕らは潔白徒なのだから」とは普段声に出来ない愚痴のようなものかもしれません。
もうこれ以上、悲しい死がおこりませんように。



『だらだら詠む言の葉』略して『だだらごと』で御座います。
内面世界を外世界に溶解させる手段として詩を用いておりますが、常にエンターテイメントであることを心にとめて詠んでいます。

拙者、修行中の身ではありますが足を運んでいただければ幸いで御座います。

                                      だだらごと
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