一夜(ひとよ)ひらひら

小指絡ませあなたの耳に
くすぐるように囁いた
「今度はいつ?」と、れんげ草

頬染め香る薄紅の
夢の続きが…見れるなら
一夜ひらひら咲く花が
今宵はなぜだか さびしそう

手のひらに雨そっと肩すぼめ
小首かしげて独り言
「もう帰るの?」と、かすみ草
こころ濡らして通り雨
夢の終わりが…すぐそこに
一夜ひらひら散る花が
今宵はなぜだか いじらしい

くちびる噛んで目を閉じる
振り向きめくれば秋暦
「今日も来ない」と、つきみ草
細く眉描き十五夜の
夢のゆくえが…気になって
一夜ひらひら舞う花が
今宵はなぜだか あでやかで

 
先夜のほどろ

後れ毛 梳くうて そっぽ向き
微かに震える伏せ睫毛 
「辛くはないの?」と、宵の月

若やる胸に絡ませた
好きと嫌いの綴れ織り
先夜の淵に咲く花を
見ては見ぬふり 気が揉める

不意にそぼ降る涙雨
雨音(あまね)に混じる透声に
「また会えるの?」と、霽の月
濡れて濡れて泣き濡れて
ぽつんと穿(う)げた胸の奥
先夜の真星(まぼし)に散る花の
儚き影が いと悲し

知らずに漏れた 溜息が
足元(あもと)に奔り 青鈍の海
「まだ恋しいの?」と、名残月
凛と結んだ桜桃(くちびる)の
かくのみ故に 恋ひやわたらむ
先夜の果(はて)に舞う花の
物狂おしい あで姿


イラスト・詩【一夜(ひとよ)ひらひら】:九鬼 ゑ女 様作


朱雀の敬愛する九鬼 ゑ女さんは、心の中に棲む鬼たちの愛を求めてさざめく魂
詩、小説、そしてイラストとそれぞれ形を変えて、また、重ね合わせて創作されています。
そこで今回は、ゑ女さんの『ラブソング』の中から、詩とイラストお借りしました。

月に姿を変えてゑ女さんの世界を覗き見した朱雀は、その素敵な様子に夢見心地で
ウットリしながら『あのね、昨日ね・・・』と翌日、月の傍を通り過ぎる星々に、一生懸命その雰囲気を
壊さないように話しているという設定で、返詩風の詩を付けさせて頂きました。
ゑ女さんのように、どこからか声が聞こえ、まるで映画のように情景が動き出すような作品は
朱雀にはとても無理ですが、その映画にほんの少しでもエキストラで参加出来ていれば嬉しいです。


ゑ女さん!朱雀のこんな身のほど知らずのお願いを許して下さってありがとうございました。




九鬼 ゑ女さんのサイトにはこちらからどうぞ  →  九鬼ゑ女のギャラリー   



BACK     HOME