≪語句解説≫


【滑歌:ぬめりうた】
江戸時代、明暦・万治の頃、遊里を中心に流行した小歌で遊客に口ずさまれた。

【熊野の牛王:くまののごおう】
烏文字でデザインされた熊野三社が発行する牛王宝印という護符。

熊野の牛王はあらゆる災難から護ってくれる御神符で、その裏は起請文や神にかけて
誓いをする時に相手と取り交わす誓紙として用いた。誓約を破ると神の使いである
カラスが一羽死に、本人も血を吐き地獄に堕ちると信じられ、江戸時代には、遊女と
客が取り交わす誓紙にも熊野牛王が使われていた。

【笑み曲ぐ:えみまぐ】
眉や口を曲げるほどに笑う。大口を開けて笑う。大いに笑い喜ぶ。

【郭の網:くるわのあみ】
遊里(遊郭)につとめる遊女が身に受けている束縛をたとえていう。

【大門:おおもん】
遊郭の入口にある門。新吉原のものは特に有名。

【恋所:こいどころ】
遊里。遊郭。色里。


【八咫の烏:やあたのからす】
八咫烏(やたがらす)のことで、神武天皇が東征の時、熊野から大和へぬける山中の道案内として
天照大神のお告げで飛来したという神話の中の烏。
中国の伝説では、太陽の中にいると想像された三本足の烏。(三は陰陽説の陽に属す)
また、この伝説から、太陽の異称。

八咫の咫(あた)は上代の、長さを計る単位の一つ。親指と人さし指とを広げた長さをいう。
古代人は七までしか数の認識がなく、咫の八倍となる八咫は非常に大きいことや、長い事を指す。

【扶桑:ふそう】
昔、中国で太陽の出る東海の中にあるといわれた神木。世界樹または、太陽。

【明鴉:あけがらす】
夜明けがたに鳴く烏。また、その声。近世、男女の朝の別れの情緒を表現するのに用いた。

【慈鳥:じちょう】
烏の異名。

【阿保烏:あほうがらす】
烏を卑しめ罵っていう語。転じて、愚かな者をたとえていう。

【苦界:くかい】
仏語で、苦しみの多い世の中。人間界。
または、遊女の世界。遊女のつらい境遇。

【兎烏怱怱:うとそうそう】
月日のたつことの早いさま。

【誰か烏の雌雄を知らん:たれか からすの しゆうを しらん】
「詩経‐小雅・正月」から、烏の雄(おす)雌(めす)の区別がつきにくい事にたとえて、
人の心や物事の是非、善悪などなかなか判定しにくいものであるの意。

※最初の――三千世界の烏を殺し 主と朝寝がしてみたい――は
高杉晋作が作った都々逸の一節


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